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インサイト100戦略
> ポジショニングとは・・・
 事業会社時代は営業マンの提案書を見る機会もありました。そうすると、その地域で1番のシェアを持つお客さんに対して、「ナンバーワンを維持するための差別化戦略」とか、書いてあるのを見たことがあります。

 まあ、このケースの提案書の中身がどうだったかは、置いておいて、いわゆる戦略論の中でのポジショニングの視点からはちょっとおかしなお話しですね。

 え、この話しの何がおかしいの?と思ったりしますか?意外と知らない人が多くて、ちょっと戸惑うのですが、差別化は弱者がすることですね。軍事上の戦略で有名なランチェスター戦略に源流があるお話しです。

 まあ、ビジネスで言う戦略は軍事上の戦略とは厳密には違いますね。軍事上の概念だった戦略を経営学に応用したのが経営戦略ですね。 

 で、軍事で言う戦略と、経営で言う戦略は何が違うのか?これも意外と知らない人が多くて、セミナーでは戸惑うのですが、違いは自社と競合の争いが顧客という第3者からの支持を争うという点で違うんですね。

 当たり前じゃないか!と思うかもしれませんが、これが考えられた当時は画期的でした。いわゆる3C、顧客、競合、自社のフレームワークはこういう考え方で創られているんですね。

 ちなみに3Cフレームワークは、大前研一氏が編み出したと言われています。こういう誰もが使う考え方を編み出す人を偉人と言うと思うのですが、まさに彼は偉人ですね・・・。

 大前さんの「企業参謀―戦略的思考とはなにか」は一世を風靡しましたね。今読んでも、なるほどと思うことが書いてあります。初版は1970年代なんですね・・・。彼が世界でも戦略的思考のグルと言われる理由がわかりますね・・・。

 ちなみに「QBハウス」というカットだけやることで有名な床屋さんがありますが、それと同じようなアイデアが書いてあります。つくづくすごいなあ、と。

 お話しを差別化って何?というところに戻します。戦略では、強者と弱者で取れる打ち手の自由度が違うという考え方をするのですね。極論すると、強いものは強いからある程度幅広い打ち手の選択肢があり、弱いものは選択肢自体が少ない、ということです。

 当たり前じゃないか!と思うかもしれませんが、意外とこういうことを前提に戦略を説明する人は少ないです。その強い者は、ビジネスで言うと、上位20%に入るところは、強いと言える。それ以外は弱者という考え方をします。(まあ、この基準も一概には言えないですけどね・・・。)

 その弱者が取る選択肢として、ニッチな市場を狙った差別化というものがあるんですね。強者/弱者、先行/後追いというスタンスの取り方でマトリックスにして、4つに分けて考えることができます。

 ①強者が先行する場合、「プラグ」という考え方をすべきです。蓋をするという意味です。強いお店が先にある商品を大量に入れてしまうと、小さいお店はその商品を入れても売れないですよね?そういうやり方です。

 ②強者が後追いする場合は「牛歩」という考え方ですね。文字通り、ゆっくり歩くんですね。ある商品がリリースされたとして、売れるか売れないかわからないな、と思ったら、他のお店が入れるのを見て、反応が良さそうであれば、入れる、反応が悪そうであれば入れないという考え方ですね。

 強い者は、先行しても後追いしても、大丈夫!ということですね。まあ、現実的にはあまりに判断を間違え続けると、弱者に転落はしますが・・・。

 ③弱いものが先行する場合、「差別化」という考え方が必要です。強い者がその商品を入れても、市場が大きくなさそうで見合わないところを狙わないと成立しないですね。「牛歩」では対応できない、という状況を作るのがポイントです。いわゆるニッチな市場を狙った差別化だと、大手がなかなか真似できないですけどね。まあ、すごい特許にでも裏打ちされていれば別ですが・・・。

 ④弱いものが後追いする場合、「コバンザメ」という考え方をしますね。大きいところが入れてる商品で、一定のお客さんがそれを求めることがわかっている時に、うちにも安くありますよ!とか、言ったりして類似商品を売るようなイメージですね。大手のおこぼれに預かるポジションの取り方です。

 こういう議論を、「ポジショニング」の検討と言うのですね。戦略の定義は、何度も言うように持続的競争優位を保持するための打ち手の束なのですが、現実的な論点に落としていくと、結局リソース配分とポジショニングのお話しに帰結します。こんなことを前に書いたような気がしますが・・・。

 で、そのリソース配分は置いておいて、今回のお話しは、ポジショニングのお話しなのです。差別化とは、ポジションの取り方の1つなんですね。知っている人は当たり前のことだ!と思うかもしれません。ごめんなさい。ただ、意外に知らない人は多いので・・・。

 このあたりのお話しでわかりやすい事例は、コンビニエンスストアでしょうか?特に成長期の終了した2001年ぐらいからの状況がわかりやすいですね。

 当時、1位セブンイレブン、2位ローソン、3位ファミリーマートというシェアでした。セブンイレブンは基本的に「プラグ」という考え方でやっていましたね。いやらしいぐらいでした。

 まず、一番いいロケーションはほとんどセブンイレブンが取る。売れ筋しか仕入れない。ある商品カテゴリにおいて、上位3品種しか入れないというスタンスでした。ローソンは1位~5位ぐらいまで入れていたので、アイテム数はローソンが確か5000アイテムに対して、セブンイレブン3000品種ぐらいだったでしょうか?(間違ってたらごめんなさい)

 ローソンは、まともに正面から戦いを挑んで敗れていましたね。中内オーナーのやや強引とも言える全国展開、多品種取扱い方針は、結局コスト増になって、後のスクラップアンドビルド(それまで増やせ増やせの方針だったのが、積極的に閉店し、再編成しようとしたこと)の呼び水になりましたね・・・。

 ファミリーマートは中途半端に差別化していたので、あまり効果的ではなかったですね。当時はデザートがいいとか言われていました。数年後、セブンイレブンのデザート開発への本格参入で、今は当時のそんな評価を覚えている人もいないでしょうね・・・。セブンイレブンの全体方針としては、「プラグ」なのですけどね。まあ、こういうことばかりしている会社、つまり後追いで真似ばっかりしている企業の方針を「牛歩」というのですけど・・・。

 あと、ファミリーマートは無印良品の取り扱いがありましたね。伊藤忠の存在意義のアピールにしか見えなかったですが・・・。コンビニで無印を扱う発想自体は良かったと思いますが、もっと高単価商品に振ればよかったと思いますけどね・・・。

 まあ、全体として、セブンイレブンの圧勝でしたね。基本的には「プラグ」ですが、おおっと思うものがあれば、「牛歩」で入れていくんですね。吉行和子が「セブンイレブンのお弁当は保存料、合成着色料が入っていなくて、実は私たちにも優しかったのだ!」と言っているCMを見て、唖然としました。
(まあ、リーダーが下位の企業がやったいいことを真似しなさい、というのは、同質化という考え方もありますが、ここではもっと上位の概念の説明ということで、置いておきますね。)

 自由度高い!それまで、ampmが冷凍弁当で、「保存料、合成着色料を使っていません」をアピールしていたのを、相当後になってから、一瞬にしてひっくり返した瞬間を見ました・・・。

 まあ、強い者は強い!という戦略の原則にきわめて忠実な出来事なのですが・・・。

 ちょっと長く書きすぎましたね。ごめんなさい。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

 

          

 
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2007.11.23(21:54)|戦略コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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