こんにちは。伊藤です。
今日も読書案内をお送りします。今日は↓。ドラゴンフライエフェクト。はじめはバタフライエフェクトかと思いましたが違いました・・・。ソーシャルメディアにおけるまともなマーケティングの本です。
近頃、日本ではソーシャルメディアマーケティングというのは、J-Paymentさんの知恵袋事件もあり、やらせのことになっている感もありますが、そういうのではなく、この本はまじめにソーシャルメディアマーケティングのフレームワークとケースを語っています。
ちょっとだけ要約を試みますと・・・
序章:ドラゴンフライの胴体
サミール・バティアはスタンフォード卒のネット起業家として順風満帆な人生を送っていた。ところが、ムンバイへの出張中、突如白血病が発病する。白血病は骨髄移植をしなければ死んでしまうが、サミールの遺伝子のタイプは特殊で、米国の骨髄バンクからは彼と一致する型のドナーはみつからなかった。
彼の血筋を考えれば、インド人から骨髄提供を受ければよいのだが、インドには全国的な骨髄登録制度はなく、彼に移植可能なタイプのドナーは見つからなかった。
サミールの友人たちは、会社の課題を解決するように、この課題にあたろうとした。突き詰めればビジネスと同じで、数字の問題だった。南アジア人の登録者を2万人増やせれば、彼に移植できるタイプの骨髄を持つドナーが現れる。制限時間は3カ月。サミールは3カ月以内に移植を受けなければ死んでしまうという宣告を医者から受けたのだ。
サミールの友人たちは、南アジア人たちにターゲットを絞って、メッセージを作り上げ、サミールの知り合い数百人にメールをした。「サミールの現在の危機、サミールのこれまでの活動、みなさんへのお願い」で構成される練り上げられたメッセージは、数百人の心を動かし、ソーシャルメディアを通じて拡散していった。
2,3週のうちに、チームはサンフランシスコ湾岸地域の15以上の企業の協力を取り付けた。そして、11週後には募集活動の数は全国で480人にのぼり、24611人が新たに骨髄バンクに登録してくれた。
3500人以上のボランティアが活動し、100万回以上のメディアインプレッションを達成し、15万人以上のサイト訪問者を得た。
キャンペーン開始から数か月後、サミールに一致するドナーがみつかり、サミールの命は救われることとなる・・・。
彼らの活動によって引き起こされたソーシャルメディアを介した情報の波及をドラゴンフライエフェクトと名付ける。ドラゴンフライエフェクトを起こすためのキーポイントは4つである。この①フォーカス、②注目、③魅了、④アクションの4つである。
フォーカスとは、具体的な目的に的を絞ることである。この場合はサミールにあったドナー登録者を見出すために、南アジア人2万人の登録者を3カ月以内に得る、である。
注目とは、見る人の目に留まるような工夫をする。この場合、ドナーの気持ちになって考え、サミールの写真や、心を打つメッセージを書いた。
魅了とは、この場合はサミールを知ってもらうことで、見る人を魅了した。サミールにブログを書いてもらい、これまでのサミールの活動を紹介し、動画をアップした。ウソ偽りないサミールを見てもらうことで、ドナー候補者に共通点を見出してもらい、アクションに駆り立てるように設計した。
アクションとは、行動を呼びかけることである。どのメッセージでも、何をしてほしいのか?を明確にした。ドナー登録をしてもらうか、メッセージを広めて欲しいということをお願いした。
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といった序章になっています。これ以降は、このフレームワークを使って、企業のソーシャルメディアでの活動を分析しています。ケースに出てくる企業は、エンブレース、P&G、スターバックス、バラク・オバマ、ボノボスなど、多岐に渡ります。
アメリカでは、ソーシャルメディアが社会的なムーブメントを起こす媒介になっている感じですね。
日本だと、まだちょっと数の面できついかなあ、と・・・。何か、突破するような出来事がソーシャルメディアであれば、いろいろと変わるかもしれないと思いますけどね。
Twitterって可能性あるよなあ、と思ったのは、震災の時でした。ピーチジョンの社長さん(当時)が、Twitterで寄付を呼びかけ、被災地にいろいろ持って行っていましたね。まとめサイトは↓。
http://matome.naver.jp/odai/2130047472452478901
でね、日本で何が足りないと思ったかと言うと、まず、ビジネス的な思考をしっかりやって行動できる人の数。あとは決定的ですけどソーシャルメディアの利用者数。この2つに支えられる形になりますが、ソーシャルメディア上で動いている「まともな」プロジェクトの数。
でしょうかね・・・。ブログでやらせやって儲けようとか、志が低いのよね・・・。そういうの、私はちょっと嫌い。ジョブズ追悼キャンペーンとか相当嫌です。せこいんですよね・・・。ジョブズ追悼をふっとばすようなことするほうが、面白くないですか?と、私は思うのです。
それで、この本の最後には、ちょっと面白い思考実験が書いてあります。それをご紹介いたしますと・・・
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著者が、金融業界のロビイストだとする。そうすると、最近の金融業界への風当たりの強さはなんとかしたい。このままデモが起こったりして、閉鎖的な業界に対してなんらかの規制でもできたら、困る。
ドラゴンフライエフェクトを駆使して、この動きを止めたい。
大衆が相手なので、ほかに何か熱中するものがあれば、彼らの熱も引いてくるだろう。何か適当な話題はないか?と考えた時に「環境問題」が思い浮かぶ。
そうだ、環境問題だ。アルゴアが話題にしたように、環境問題を話題にして、温暖化を食い止めよう!という運動を起こしてしまえば、大衆はそちらに目が向くだろう。
注意を引くために、白熊が極地の氷が溶けることで、住む場所を失う!といったメッセージ、動画を使おう。誰が白熊のかわいい瞳を守りたいと思わないだろうか?
自然の素晴らしさ、動物のかわいらしさで魅了できない大衆はいない。
そして、化石燃料の使用が温暖化を招くと考えて、スーパーのレジ袋を使うのをやめよう!というアクションをお願いしよう。そして、温暖化反対と書いたトートバックを買い物に持っていくことにしよう!と呼びかけよう。
この運動はたちまちに火が付き、人々は夢中になった。そして、ウォール街への批判など忘れてしまう・・・
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いかがでしょうか?著者は扇動的メッセージに自覚的です。ソーシャルメディアで扇動的なメッセージを仕掛けていくことも可能です。当然、これまで、マスメディアでもいろいろと仕掛けられてきていました。
とあるファッション誌で、これを流行らせよう!といってやりはじめると、本当にそれが流行る。そういったことは、ずっとそうだったのです。
ソーシャルメディアになって変わったことは、誰でも仕掛けられるようになったことでしょうか?でもね、これまで仕掛けることにかかわってきた人のほうが、仕掛けるのは当然、上手でしょうね。
著者は、わざとでしょうが、ややピュアに、ソーシャルメディアは正しいことに使えるんだ!といったメッセージを発しています。最後にこういったケースを書くことで、読者に警鐘をならしています。ソーシャルメディアはいろいろと仕掛けられている面もあるんだ、と。
メディアリテラシーと言う言葉は使い古されましたが、ソーシャルメディアの時代にも、非常に大切ですね・・・。
長くなってきたのでこのあたりで。それでは次回をお楽しみに。
今日も読書案内をお送りします。今日は↓。ドラゴンフライエフェクト。はじめはバタフライエフェクトかと思いましたが違いました・・・。ソーシャルメディアにおけるまともなマーケティングの本です。
![]() | ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変える (2011/08/26) ジェニファー・アーカー、アンディ・スミス 他 商品詳細を見る |
近頃、日本ではソーシャルメディアマーケティングというのは、J-Paymentさんの知恵袋事件もあり、やらせのことになっている感もありますが、そういうのではなく、この本はまじめにソーシャルメディアマーケティングのフレームワークとケースを語っています。
ちょっとだけ要約を試みますと・・・
序章:ドラゴンフライの胴体
サミール・バティアはスタンフォード卒のネット起業家として順風満帆な人生を送っていた。ところが、ムンバイへの出張中、突如白血病が発病する。白血病は骨髄移植をしなければ死んでしまうが、サミールの遺伝子のタイプは特殊で、米国の骨髄バンクからは彼と一致する型のドナーはみつからなかった。
彼の血筋を考えれば、インド人から骨髄提供を受ければよいのだが、インドには全国的な骨髄登録制度はなく、彼に移植可能なタイプのドナーは見つからなかった。
サミールの友人たちは、会社の課題を解決するように、この課題にあたろうとした。突き詰めればビジネスと同じで、数字の問題だった。南アジア人の登録者を2万人増やせれば、彼に移植できるタイプの骨髄を持つドナーが現れる。制限時間は3カ月。サミールは3カ月以内に移植を受けなければ死んでしまうという宣告を医者から受けたのだ。
サミールの友人たちは、南アジア人たちにターゲットを絞って、メッセージを作り上げ、サミールの知り合い数百人にメールをした。「サミールの現在の危機、サミールのこれまでの活動、みなさんへのお願い」で構成される練り上げられたメッセージは、数百人の心を動かし、ソーシャルメディアを通じて拡散していった。
2,3週のうちに、チームはサンフランシスコ湾岸地域の15以上の企業の協力を取り付けた。そして、11週後には募集活動の数は全国で480人にのぼり、24611人が新たに骨髄バンクに登録してくれた。
3500人以上のボランティアが活動し、100万回以上のメディアインプレッションを達成し、15万人以上のサイト訪問者を得た。
キャンペーン開始から数か月後、サミールに一致するドナーがみつかり、サミールの命は救われることとなる・・・。
彼らの活動によって引き起こされたソーシャルメディアを介した情報の波及をドラゴンフライエフェクトと名付ける。ドラゴンフライエフェクトを起こすためのキーポイントは4つである。この①フォーカス、②注目、③魅了、④アクションの4つである。
フォーカスとは、具体的な目的に的を絞ることである。この場合はサミールにあったドナー登録者を見出すために、南アジア人2万人の登録者を3カ月以内に得る、である。
注目とは、見る人の目に留まるような工夫をする。この場合、ドナーの気持ちになって考え、サミールの写真や、心を打つメッセージを書いた。
魅了とは、この場合はサミールを知ってもらうことで、見る人を魅了した。サミールにブログを書いてもらい、これまでのサミールの活動を紹介し、動画をアップした。ウソ偽りないサミールを見てもらうことで、ドナー候補者に共通点を見出してもらい、アクションに駆り立てるように設計した。
アクションとは、行動を呼びかけることである。どのメッセージでも、何をしてほしいのか?を明確にした。ドナー登録をしてもらうか、メッセージを広めて欲しいということをお願いした。
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といった序章になっています。これ以降は、このフレームワークを使って、企業のソーシャルメディアでの活動を分析しています。ケースに出てくる企業は、エンブレース、P&G、スターバックス、バラク・オバマ、ボノボスなど、多岐に渡ります。
アメリカでは、ソーシャルメディアが社会的なムーブメントを起こす媒介になっている感じですね。
日本だと、まだちょっと数の面できついかなあ、と・・・。何か、突破するような出来事がソーシャルメディアであれば、いろいろと変わるかもしれないと思いますけどね。
Twitterって可能性あるよなあ、と思ったのは、震災の時でした。ピーチジョンの社長さん(当時)が、Twitterで寄付を呼びかけ、被災地にいろいろ持って行っていましたね。まとめサイトは↓。
http://matome.naver.jp/odai/2130047472452478901
でね、日本で何が足りないと思ったかと言うと、まず、ビジネス的な思考をしっかりやって行動できる人の数。あとは決定的ですけどソーシャルメディアの利用者数。この2つに支えられる形になりますが、ソーシャルメディア上で動いている「まともな」プロジェクトの数。
でしょうかね・・・。ブログでやらせやって儲けようとか、志が低いのよね・・・。そういうの、私はちょっと嫌い。ジョブズ追悼キャンペーンとか相当嫌です。せこいんですよね・・・。ジョブズ追悼をふっとばすようなことするほうが、面白くないですか?と、私は思うのです。
それで、この本の最後には、ちょっと面白い思考実験が書いてあります。それをご紹介いたしますと・・・
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著者が、金融業界のロビイストだとする。そうすると、最近の金融業界への風当たりの強さはなんとかしたい。このままデモが起こったりして、閉鎖的な業界に対してなんらかの規制でもできたら、困る。
ドラゴンフライエフェクトを駆使して、この動きを止めたい。
大衆が相手なので、ほかに何か熱中するものがあれば、彼らの熱も引いてくるだろう。何か適当な話題はないか?と考えた時に「環境問題」が思い浮かぶ。
そうだ、環境問題だ。アルゴアが話題にしたように、環境問題を話題にして、温暖化を食い止めよう!という運動を起こしてしまえば、大衆はそちらに目が向くだろう。
注意を引くために、白熊が極地の氷が溶けることで、住む場所を失う!といったメッセージ、動画を使おう。誰が白熊のかわいい瞳を守りたいと思わないだろうか?
自然の素晴らしさ、動物のかわいらしさで魅了できない大衆はいない。
そして、化石燃料の使用が温暖化を招くと考えて、スーパーのレジ袋を使うのをやめよう!というアクションをお願いしよう。そして、温暖化反対と書いたトートバックを買い物に持っていくことにしよう!と呼びかけよう。
この運動はたちまちに火が付き、人々は夢中になった。そして、ウォール街への批判など忘れてしまう・・・
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いかがでしょうか?著者は扇動的メッセージに自覚的です。ソーシャルメディアで扇動的なメッセージを仕掛けていくことも可能です。当然、これまで、マスメディアでもいろいろと仕掛けられてきていました。
とあるファッション誌で、これを流行らせよう!といってやりはじめると、本当にそれが流行る。そういったことは、ずっとそうだったのです。
ソーシャルメディアになって変わったことは、誰でも仕掛けられるようになったことでしょうか?でもね、これまで仕掛けることにかかわってきた人のほうが、仕掛けるのは当然、上手でしょうね。
著者は、わざとでしょうが、ややピュアに、ソーシャルメディアは正しいことに使えるんだ!といったメッセージを発しています。最後にこういったケースを書くことで、読者に警鐘をならしています。ソーシャルメディアはいろいろと仕掛けられている面もあるんだ、と。
メディアリテラシーと言う言葉は使い古されましたが、ソーシャルメディアの時代にも、非常に大切ですね・・・。
長くなってきたのでこのあたりで。それでは次回をお楽しみに。
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