fc2ブログ

**********************************************************************
メールマガジン「インサイト100」
週に1回配信中。
登録は⇒http://www.taii.jp/
**********************************************************************
インサイト100戦略
> ビジョンと騙し絵の不思議な関係
 ようやく、セミナーから帰ってきました。

 疲れました・・・。非常に。

 でも、大学の助教授の方がいたり、新興企業のマネジャーさんがいたり、中小企業診断士の方がいたり、いろいろと刺激になりました。

 家の書棚を整理していたら、いろんな本が出てきました・・・。

日本型マーケティングの革新日本型マーケティングの革新
(1999/07)
池尾 恭一

商品詳細を見る


 そして、昔受けていた講座の資料とか。↑を書いている池尾先生の講義にも出ていたんですが、すっかり内容を忘れておりました。

 ただ、日本企業のマーケティングが非常にわかりやすく書かれている良書だと思います。ただ、今日はこの本のお話しではありません。

 今日はビジョンと騙し絵の関係について、昔から書いていることのおさらいです。これまた、インサイトナウ、転載企画です。ごめんなさいね。記事はhttp://www.insightnow.jp/article/1309ですね。


 戦略策定に際して、外部環境を客観的に分析することは非常に重要です。でも、客観なんて本当にあるんでしょうか?私は、外部環境分析のお話しをする時には、必ず騙し絵とビジョンの不思議な関係について説明します。

「老婆と貴婦人」と言われる騙し絵をご存知ですか?
絵は↓ですね。

老婆と貴婦人


小学校や中学校の教科書によく出てくるので、見たことがある人は非常に多いのではないかと思います。

この絵は、老婆だと思ってみると、老婆に見えます。そして、貴婦人だと思って見ると、貴婦人に見えます。

でも、同時には見えないですね。

老婆に見えるときに目の部分は、貴婦人に見えるときは耳に見えます。老婆の口に見える部分は、貴婦人の首に見えるんですね。

どんな全体か?によって、各部分の意味合いは変わってくるんです。

こういう部分と全体の関係性のことを「ゲシュタルト」と言います。初耳でしょうか?セラピー、心理学、科学哲学の世界では有名な言葉です。そして、経営学の世界でも、必須の概念だと私は思っています。

全体は、要素と、ある意味で恣意的な要素間の関係性によって、成り立っている。

そして、その関係性は、恣意的に変わる。昔の言葉で言うと「あばたもエクボ」でしょうか?

その相手を好きだと思ってみれば、「あばた」という吹き出物も、エクボに見えたりする。

全ては全体観と、関係性の中で成立するものなんですね。

そんなの当たり前だ、と思いますか?

でも、意外とビジネスでこのことを理解するのは、難しいのです。

例えば、コンサルティングサイドの人間が、シンクタンクを揶揄して言うのが、「シンクタンクの報告書には主語がない」という言葉です。

今期の売上は10%増、営業利益は5%増である。

というふうに書いてあったとして、その事象の意味合いは?という問いに答えていないというものです。

まあ、ファクトを集めることは集めることで、価値はあるんですけどね。ただ、コンサルティングバリューとは違うものですね。

それで、この「意味合い」というのが、関係性の中で物事を見る、ということです。全体として、老婆を見ようとしているのか、貴婦人を見ようとしているのか?によって、変わってくるということです。

その意味合いによって、企業がすべきこと、アクションは変わってきますよね。

あまりいい例ではないですが、今期の売上が10%増だったとして、5年後に目指している数値などによって、その意味合いは違ってきますよね。今時はあまりありませんが、5年後は売上が倍増する、という目標の中では、この10%は少ないという評価になりそうですし、もし、5年後に20%増の計画を立てているとすれば、10%は多いという評価になります。

そして、今期のリソースの投入と、活動はどうだったのかを考え、来期の計画、つまりアクションを考えます。

繰り返しになりますが、「全体として見たいもの」、を規定しないと意味合いというものは、出てきません。

その全体として見たいもの、というのが、企業の長期的な意思、ビジョンですね。

ビジョンが無いと、ファクトの評価ができません。ファクトの意味合いがわからなくなります。

もし、企業体に属する個々人が、全く違うビジョンを見ていたら、同じファクトを見ても、反応が違ってしまうんですね。あまり組織としての力を発揮できないことになります。

企業の意思は、当然、経営陣が明確化すべきものです。そのビジョンに呼応して、従業員は集まってくる、日々の活動に意味合いを見出していくものですからね。

経営者が、方針をコロコロ変えると、メンタルヘルス的には非常に悪いことがわかりますよね?老婆と貴婦人の例で言えば、ある時に老婆の目に見えているものが、突如、貴婦人の耳だ、ということになるわけです。

この例ではわかりやすく2つの全体像しか提示していませんが、全体像がいくつもあったとします。従業員は、各部分を見ていることになりますが、あるときは、Aという全体像で見ることを求められ、あるときはB、またあるときはC、Dとなれば、目の前の事実の意味合いが本当にめまぐるしく変わります。

目の前のものの見え方がころころと変わってしまうのは、「ゲシュタルトが揺らぐこと」になるんです。ある意味で、心の病の状態に近くなってしまうんですね。(このあたりのことの解説はまた別の機会に書かせていただきます。)

だから、企業のビジョンは設定したら、それに基づいて経営することが大事になります。

オーナー企業で、コロコロと方針が変わる企業は、離職率が高かったりしませんか?あるいは、方針をコロコロ変える上司の部門でも、そうだと思います。

確かに、強くて明確なビジョンは、なかなか簡単にはできません。

しかし、ビジョンがなければ、外部環境をいくら分析しても、その意味合いというのは、出てこないんですね。ファクトを集めても、分析の視点がなくなってしまう。意味合いが規定できない。つまりはアクションに結びつかない。

単にファクトを集めても、アクションに結びつかなければ、そのリサーチは無駄ですよね?

こんな価値をこんな顧客に対して提供して行くことで、社会を、世界をこうして変えて行きたい、ということをしっかりビジョンとして規定する。

その上で、外部環境がどうなるか?をシナリオプランニングなどの手法を使って予測し、その上で、それがビジョンに対してどんな意味合いがあるかを考える。

その意味合いを統合して、市場の変化とその変化への対応、ビジョンの実現への近づき方を3年~5年で規定する。まあ、かっこよく言うと、戦略策定でしょうか。

そのビジョンへの近づき方が方向性であり、アクションが束になっているものですよね?

だから、ビジョンも無いのに、ファクトを集めるのは、価値の低い行為ですね。1回のリサーチ結果に一喜一憂してもあまり意味がないのです。

お仕事の時に、リサーチの意味合いのお話しをする時、私は、老婆と貴婦人のお話しから、ビジョンのお話し、メンタルヘルスのお話し、意味合いから、アクションへの結び付け方のお話しをします。

ちょっと長くなりますが、分かる人は30分ぐらいでわかってくれます。

このつながりも、1つのゲシュタルトですよね?

私はうまく伝えられていますか?
まあ、こういうパッケージで私は商売している、ということですね。

完璧だとは言いませんが、企業を大きく安定させるには、こういう考え方が必要だと思います。企業の経営陣は、従業員のメンタルヘルスにも責任があると思います。

少しでもハッピーの総量が大きいビジネス社会の到来を心から願っております。
関連記事
スポンサーサイト



2008.05.05(23:27)|戦略コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
名前:
コメントタイトル:
メールアドレス:
URL:
コメント:

パスワード:
管理人だけに表示:
管理者にだけ表示を許可
Twitter
メールマガジン登録
メールマガジン「インサイト100」週に1回配信中。登録は⇒http://taii.jp/の登録窓から
プロフィール
推薦図書
経営理念
弊社のコンサルティングのポリシーです。

・過去に人類が考えてきたこと(Thought)を蓄積し、そこから鋭い洞察(Insight)を生み出し、その洞察がまた、Thoughtの一部になっていくプロセスを回していくこと。そのプロセスが社会のナレッジ量を増加させ、全ての価値を生み出すことを認識すること

・先人の知恵に対する敬意を払い、学び続けること。ナレッジの自己への入力量が自身の考える能力を向上させ、社会のナレッジ量を増加させることを知ること

・社会のビジネスナレッジの偏在を正すことを目指すこと。そのために社会の構成員であるクライアントに対してビジネスナレッジを提供すること

・ビジネスナレッジの偏在を利用する悪貨たる企業を駆逐する良貨たらんとすること。そのために偏在を利用する企業以上のマーケティング力を持つこと。そして、提供したナレッジに見合った対価をクライアントから頂き収益を上げ、成長していくこと

・社会に対する志を持つ企業、個人をクライアントとすること。例え儲かるとしても、志を持たない企業、個人をクライアントとしないこと

・クライアントの成長を望むこと。具体的な解の提示よりも、その解を出すプロセスをシェアすることにより、クライアント自身がプロセスを組みなおし、異なった解を出す力を増加させることに重きを置くこと

・抽象的な理論のレイヤから、クライアントサイドの具体へと寄っていくこと。ただし、その過程でクライアントにも具体のレイヤから抽象のレイヤに寄ってもらうこと。その上で、中間のレイヤでクライアントと共に新しいナレッジを生み出していくこと
カテゴリー
月別アーカイブ
RSSフィード
ブロとも申請フォーム